データキャリア解説

可変データ印刷の発番で事故を防ぐ、データ設計と検版の注意点

可変データ印刷でコードを発注するとき、事故の原因は多くの場合、印刷機の性能ではなくデータ設計にあります。全数が同じ内容の通常印刷とは違い、1枚ごとに番号が変わる以上、1枚間違えればその1枚がそのまま不良品になるからです。桁設計・チェックデジットの責任分担・番号帯管理・検版・品質グレードという5つのポイントを、PostNordの技術仕様書とGS1 General Specificationsの一次情報をもとにまとめました。

この記事の要点

  • 可変データ印刷の事故は、印刷機ではなくデータ設計と検証の設計で起きる。全数同一の通常印刷とは品質保証の考え方が根本的に違う。
  • EAN-13・ITF-14・SSCC-18などは桁数が固定されており、後から増やせない。ITFは偶数桁必須という制約もある。
  • チェックデジットは発行元と印字側のどちらが計算するかが分担されているケースがある。PostNordは番号帯のみを払い出し、計算は印字ソフト側の責任とされている。
  • 番号帯の再利用が認められていない規定が実在する。使い切りの管理を怠ると欠番・重複が発生する。
  • 品質グレードは1枚ではなく全数で担保する必要がある。GS1の最低要求グレード1.5に対し、PostNordはB以上とより厳しい基準を課している。

可変データ印刷の事故は、印刷機ではなくデータ設計で起きる

通常印刷は全数が同じ内容のため、刷版と刷り出しの1枚を見比べれば品質は担保できます。ところが可変データ印刷は1枚ごとに番号が変わるため、事情がまったく異なります。1枚でも番号を間違えれば、その1枚がそのまま不良品になります。これは印刷機の解像度や速度の問題ではありません。発番のルールをどう設計し、刷り上がった番号をどう検証するかという問題です。桁設計・チェックデジットの責任分担・番号帯管理・検版の考え方・品質グレードという5つのポイントを、PostNord(スウェーデン郵便)の技術仕様書とGS1 General Specificationsに基づいてまとめました。可変データ印刷そのものの仕組みは可変データ印刷とは、番号を1枚ずつ変える技術の基礎はシリアルナンバリングとはをご参照ください。

桁は後から増やせない

コードの桁数を固定した規格は、あとから桁が足りなくなっても増やせません。数量が想定を超えて番号帯を使い切りそうになったとき、桁が固定のコードでは番号体系そのものを作り直すことになります。発注前に、想定生産数の何倍まで耐えられる桁数かを確認しておく必要があります。

桁数が固定されている主なコード
コード名 文字種 桁数
EAN-13(JANコード) 数字のみ 13桁固定
EAN-8(JANコード) 数字のみ 8桁固定
ITF-14(EAN-14・GTIN-14) 数字のみ 14桁固定
SSCC-18 数字のみ 18桁固定
Code 128 全ASCII 可変長

ITF(Interleaved 2 of 5)には、数字のみで偶数桁必須という追加の制約があります。奇数桁の番号を発番したい場合、先頭にゼロを補うなどの桁合わせが必要になり、これも設計段階で決めておく必要があります。将来の桁数変動が見込まれる場合は、Code 128のような可変長のコードを選ぶ選択肢もあります。コードの種類ごとの整理は発行できるコードの全一覧でも扱っています。

チェックデジットは誰が計算するのか

チェックデジットの計算を誰が担うかは、規格によって分担が決まっているケースがあります。PostNordの荷物ID(英字プレフィックス+8桁シリアル番号+チェックデジット+国別サフィックスSE)では、PostNordが払い出すのは番号帯のみです。チェックデジットの計算、およびプレフィックス・サフィックスの付加は、印字ソフト側の責任とされています。

この分担を発注側・印字側の双方が正しく認識していないと、事故につながります。発行元が番号は渡したのだから正しいコードになっているはずと考え、印字側が渡された番号をそのまま印字すればよいと考えていた場合、チェックデジットが計算されないまま出荷され、全数が読み取り不良になりかねません。番号を発番する体系を採用する際は、番号帯の払い出し・チェックデジットの計算・接頭辞や接尾辞の付加を、それぞれ誰が担うのかを最初に確認しておく必要があります。

加重モジュラス11の例

PostNordの技術仕様書は、チェックデジットの算出方法として加重モジュラス11を規定しています。手順は次のとおりです。

  1. 各桁に重み係数を掛ける(8桁の場合の係数は8, 6, 4, 2, 3, 5, 9, 7)
  2. 積をすべて合計する
  3. 合計を11で割る
  4. 11から余りを引く
  5. 結果が1〜9ならその数字をチェックデジットとする。10なら0、11なら5とする

この手順をそのまま適用すると、たとえば8桁の番号「12345678」であれば、各桁に係数を掛けた積の合計は204、204を11で割った余りは6、11から6を引くと5になるため、チェックデジットは5です。実務上重要なのは、この手順を印字システム側が正しく実装しているかどうかを、番号を1件だけでなく複数件でテスト計算し、突き合わせて確認しておくことです。

番号帯は使い切り。再利用は認められないことがある

PostNordの技術仕様書は、払い出された番号帯の再利用を認めていません。使い切ったら、新しい番号帯を改めて注文する必要があります。この規定は、番号の重複を発行元の側で構造的に防ぐための設計と見られます。

発番側にとっての実務上の意味は、番号帯の残数を管理する台帳や仕組みを持っておく必要があるということです。番号帯を使い切りそうな時期を把握できていないと、生産の途中で番号が枯渇し、ラインを止めて新しい番号帯の到着を待つことになります。また、欠番や重複が起きていないかを定期的に突き合わせる運用も、番号帯の管理とあわせて設計しておく必要があります。

全数が違うと、検版の考え方が変わる

通常印刷の検版は、刷版や校正刷りと本刷りの1枚を見比べれば足ります。全数が同じ内容だからです。ところが可変データ印刷では、1枚ごとに違う番号が刷られるため、この考え方が通用しません。確認すべきは刷版どおりに刷れているかではなく、発番データとして意図した番号列と、実際に刷られた番号列が一致しているかです。

つまり、可変データ印刷における検版は、静止画1枚の良否判定ではなく、発番データという系列全体との突き合わせです。番号の抜け・重複・順序の入れ替わりが起きていないかを、発番データ側と印字結果側の両方から確認する体制が必要になります。トレーサビリティ用途で番号とコードを組み合わせる場合はトレーサビリティ導入支援でも関連する内容を扱っています。

品質グレードは1枚ではなく全数の話

コードの品質グレードについても、同じことが言えます。1枚だけ規格を満たす品質で刷れても意味がありません。生産された全数が、同じ品質グレードを満たしている必要があります。

品質グレードの水準比較
規定元 用途 最低品質グレード
GS1 General Specifications 小売POS 1.5/06/660
GS1 General Specifications 一般流通 1.5/10/660
GS1 General Specifications GS1 DataMatrix・GS1 QR Code 1.5/20/660
PostNord技術仕様書 荷物ID(Code 128) ISO 15416でグレードB以上

GS1の一般流通における最低要求はグレード1.5です。これに対し、PostNordの荷物IDはISO 15416で総合シンボルグレードB以上を求めており、GS1の最低要求より厳しい水準です。あわせて細モジュール0.28mm以上、太細比は通常1:3、高さ9mm以上、クワイエットゾーンは左右ともXディメンションの10倍以上という寸法要求も課しています。可変データ印刷では、印刷される番号ごとにこの品質を維持できているかを、生産数量の中で確認する必要があります。1枚のサンプルが規格を満たしていることは、全数が満たしていることの証明にはなりません。品質グレードの読み方はバーコードの印刷品質はどう評価されるかで詳しく扱っています。

ウメモトにご相談いただけること

どのチェックデジット方式を採用するか、どの番号体系(GS1・郵便系・独自体系など)を選ぶかという業界標準の選定判断は、当方の対応範囲外です。ご相談いただけるのは、規格が決まったあとの版面設計、可変データ印刷での1枚ごとの発番実装、そして刷り上がった番号列の検版体制です。桁設計やチェックデジットの計算責任の分担についても、印刷面の実装としてご相談いただけます。

よくある質問

Q1チェックデジットの計算は、印刷会社と発注側のどちらが行うのですか。
A一律には決まっておらず、規格や発行元との取り決めによって異なります。PostNordの荷物IDの例では、番号帯の払い出しは発行元、チェックデジットの計算とプレフィックス・サフィックスの付加は印字ソフト側の責任とされています。発注前に、どちらが何を担うのかを明確にしておく必要があります。
Q2ITFで奇数桁の番号を発番することはできますか。
AITF(Interleaved 2 of 5)は数字のみ・偶数桁必須という制約があります。奇数桁の番号を扱いたい場合は、先頭にゼロを補うなどの桁合わせが必要になるため、発番ルールの設計段階で確認しておく必要があります。
Q3固定桁のコードを選んだあとで、桁数が足りなくなったらどうなりますか。
AEAN-13・ITF-14・SSCC-18のように桁数が固定された規格は、あとから桁を増やすことができません。想定生産数が桁数の上限に近づく可能性がある場合は、発注前に将来の数量見込みまで含めて桁数を検討することをおすすめします。
Q4番号帯を使い切った場合、同じ番号帯を再利用できますか。
A規格によっては再利用が認められていません。PostNordの技術仕様書では、払い出された番号帯の再利用を認めておらず、使い切った場合は新しい番号帯を改めて注文する必要があると規定されています。
Q5品質グレードは、抜き取り検査で一部を確認すれば十分ですか。
A可変データ印刷では、1枚ごとに異なる番号が刷られるため、一部のサンプルが基準を満たしていても、全数が同じ品質を満たしている保証にはなりません。GS1の最低要求やPostNordのグレードB以上といった基準を、生産数量全体で維持できているかを確認できる検証設計が必要です。

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