この記事の要点
- バーコードの品質は、一次元コードはISO/IEC 15416、二次元コードはISO/IEC 15415という国際規格に沿って、検証機(ベリファイア)が数値化して判定します。スキャナの読み取り可否とは別の評価軸です。
- グレードはgrade/aperture/light/angleという形式で表記されます。1.5/06/660は、グレード1.5・開口径0.006インチ・照明波長660nmを意味し、入射角が既定の45度の場合は表記が省略されます。
- GS1 General Specifications(Release 26.0)は用途別の最低品質を定めています。小売POSは1.5/06/660、一般流通は1.5/10/660、GS1 DataMatrix・GS1 QR Codeは1.5/20/660です。
- GS1の最低要求より厳しい基準を発注先が独自に定めることがあります。スウェーデン郵便PostNordは書留・速達ラベルのCode 128に対し、ISO 15416でグレードB以上を要求しています。
- 「読み取れました」は品質保証にならないため、出荷前には測定条件(開口径・照明波長)を発注先と揃え、実運用に近い状態(ラミネート後等)で数値を確認しておくことが実務上重要です。
「スキャナで読めた」は品質の証明にならない
店頭やハンディスキャナで読み取れると、多くの現場ではそれで合格としがちです。しかしスキャナが返すのは、読み取れた・読み取れなかったという二択の結果だけです。境界線ぎりぎりの品質のバーコードでも、たまたまその個体・その角度・その距離では読めてしまうことがあります。
これに対して検証機(ベリファイア)は、ISO/IEC 15416(一次元コード)・ISO/IEC 15415(二次元コード)という国際規格に沿って、品質を数値のグレードとして判定します。同じ読めるバーコードでも、グレードが高いものと低いものが存在し、低いグレードのまま出荷すると、自社の設備では読めても出荷先の別機種・別条件の設備では読み取れない、という事故につながります。
すでに読み取れなくなってしまった商品の原因調査・対策はバーコードが読み取れない原因と対策で扱っています。本記事が扱うのは、その手前——出荷する前にどう品質を保証しておくか、という予防の話です。
品質は規格に沿って数値化される
一次元コード(バーコード)の品質はISO/IEC 15416、二次元コード(QRコード・DataMatrix等)の品質はISO/IEC 15415という国際規格に沿って測定・判定されます。検証機メーカーの解説によると、ISO/IEC 15416では最小反射率・エッジコントラスト・モジュレーション・欠陥・デコーダビリティ・クワイエットゾーンといった項目が、ISO/IEC 15415ではシンボルコントラスト・モジュレーション・軸の不均一性・グリッドの不均一性・固定パターンの損傷・未使用の誤り訂正といった項目が、それぞれ評価されるとされています。ただし規格原文は有償であり、当方では項目の詳細を直接確認できていません。
判定結果はgrade/aperture/light/angleという形式で表記されます。gradeは総合シンボルグレード、apertureは検証に使う開口径(インチの1000分の1単位)、lightは照明の波長(nm、広帯域の白色光の場合はW)、angleは照明の入射角です。入射角は既定が45度で、45度の場合は表記が省略されます(規格上は30度・90度も存在します)。
検証機メーカーの解説によれば、グレードは4.0〜0.0の数値とA〜Fの文字評価が対応するとされています(4.0以下3.5以上がA、3.5未満2.5以上がB、2.5未満1.5以上がC、1.5未満0.5以上がD、0.5未満がF)。この対応表もISO規格の原文では確認しておらず、検証機メーカーの解説に基づく情報として扱ってください。
GS1が用途別に定める最低品質
GS1 General Specifications(Release 26.0)は、用途ごとに満たすべき最低品質を定めています。
| 用途 | 対象シンボル | 最低品質の表記 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 小売POS | EAN・UPC・GS1 DataBar | 1.5/06/660 | グレード1.5・開口径0.006インチ・波長660nm |
| 一般流通 | EAN・UPC・ITF-14・GS1-128 | 1.5/10/660 | グレード1.5・開口径0.010インチ・波長660nm |
| 二次元コード | GS1 DataMatrix・GS1 QR Code | 1.5/20/660 | グレード1.5・開口径0.020インチ・波長660nm |
いずれも最低ラインはグレード1.5、文字評価で言うCに相当します(検証機メーカーの解説による対応)。GS1が定めているのはあくまで最低限これは満たしてくださいという水準であり、これを満たせば常に読み取れることを保証するものではありません。用途別のサイズ規定はバーコードの最小サイズはどう決まるかで扱っています。
表記の読み方
たとえば小売POSの最低品質「1.5/06/660」は、グレード1.5・開口径0.006インチ・照明波長660nmという意味です。入射角の記載がないのは、既定の45度で測定したことを示しています。
開口径は、検証機のセンサーが読み取る範囲の大きさで、対象シンボルの最小Xディメンション(バーコードの最も細いバー、二次元コードの最小セルの寸法)の80%として指定されるのが通例です。同じシンボルでも開口径が違えば出てくるグレードも変わるため、複数の検証結果を比較するときは、開口径と照明波長の条件が揃っているかどうかを必ず確認する必要があります。
発注先がGS1より厳しい要求を出すことがある
GS1の定める最低品質は、あくまで業界共通の下限です。発注先によっては、これより厳しい基準を独自に要求してくる場合があります。
一例として、スウェーデン郵便PostNordの技術仕様書では、書留・速達等のラベルに使用するCode 128(ISO/IEC 15417)について、ISO 15416による総合シンボルグレードB以上を要求しています。GS1の最低ラインであるグレード1.5より一段厳しい水準です。あわせて、細モジュール幅0.28mm以上、太細比は通常1:3、バーコードの高さ9mm以上、クワイエットゾーンは左右ともXディメンションの10倍以上という仕様も定められています。
このように、GS1の最低要求を満たしていても、個別の発注先が求める基準には届かない、というケースが実際に存在します。出荷先が変われば要求グレードも変わりうる、という前提を持っておくことが重要です。
出荷前に何を確認するか
「スキャナで読めた」から一歩進んで、品質を保証するために出荷前に確認しておきたいことは次のとおりです。
- 検証を仕様に組み込む:発注先が求めるグレードと規格(ISO/IEC 15416か15415か)を仕様書に明記し、検証機での測定を出荷前工程に組み込む。
- 測定条件を揃えて比較する:開口径・照明波長が異なる測定結果は単純比較できません。発注先が指定する条件と揃えて測定・比較する。
- 実運用に近い状態で測る:印刷直後ではなく、ラミネート加工後や、実際に貼付する被着体に貼った状態で測定する。加工や貼付でグレードが変わることがあるためです。
- 発注先の要求を個別に確認する:GS1の最低品質を満たしていても、発注先が独自に厳しい基準を持っている場合があります。発注前に要求グレードを確認しておくことが手戻りを防ぎます。
ウメモトにご相談いただけること
バーコード・QRコードの印刷仕様の検討や、想定される検証条件を踏まえた版面設計・印刷方式の選定については、ご相談いただけます。ただし、規格への適合可否の最終判断や、当方の設備での実測グレードの数値保証は対応範囲外です。発注先から指定された検証条件(開口径・照明波長・要求グレード)が分かっている場合は、その条件を踏まえた印刷仕様のご相談を承ります。