いま消費者庁で何が議論されているのか
食品表示のデジタル化は、令和5年10月から令和6年3月にかけて計4回開催された「令和5年度食品表示懇談会」で、食品表示制度の中長期的な方向性の一つとして検討課題に挙げられたことが出発点です。国際的にはコーデックス(CODEX)で「食品表示における食品情報の提供のためのテクノロジーの使用に関するガイドライン(CXG105-2024)」が定められ、食品の名称や安全・栄養に関する情報など義務的な食品情報は、テクノロジーの使用のみによって提供されるべきではないという考え方が示されています。これを受けて、より具体的な検討の場として「食品表示へのデジタルツール活用検討分科会」が令和6年10月から令和7年11月にかけて計7回開催され、令和7年12月に取りまとめが公表されました。分科会での議論は、この取りまとめをもって終了しています。その後、検討の場は再び食品表示懇談会に移り、令和8年7月15日に開催された令和8年度第1回食品表示懇談会では「食品表示へのデジタルツールの活用検討の進め方について」と「海外制度調査結果の報告」が議題となりました。制度化に向けた検討は、現在も継続中です。
※本記事は消費者庁「食品表示へのデジタルツール活用検討分科会 取りまとめ」(令和7年12月)および同庁の公表資料に基づいて作成しています。制度は検討中であり、今後内容が変わる可能性があります。
分科会で決まったことと、これから決まること
分科会の取りまとめでは、デジタルツール活用の考え方の骨格が示された一方、容器包装表示との具体的な切り分けなど実務に直結する論点の多くは、今後の議論に持ち越されています。現時点で「方向性が示されたこと」と「まだ決まっていないこと」を分けて整理すると、次のとおりです。
| 決まったこと | まだ決まっていないこと |
|---|---|
| デジタルツール活用の可否は事業者の任意 | 施行時期 |
| 制度上求める水準は、既にシステム等で表示内容をデータ化している事業者を想定 | 義務化の有無・範囲 |
| データ管理方式は各社の既存データベースを活用する「分散管理」(国による一元管理は行わない) | 容器包装に必ず表示する事項と、デジタル代替可能な事項の具体的な切り分け(令和8年度以降、食品表示懇談会で議論) |
| 消費者のアクセス手段は個人スマートフォンでの二次元コード読み取り(JANコードは不採用) | 保管データの具体的な項目・入力ルールの詳細 |
| 二次元コード読取後は「直接表示」「選択式」を許容し、「入力式」は除外 | 修正履歴の具体的な保管期間 |
| 保管データ項目は義務表示に加え任意表示・利便性/安全性に関わる情報も幅広に保管可能(保管可能=提供必須ではない) | 広告表示に関する「望ましい例」の詳細内容 |
| 修正履歴の保管を一定の要件化とする方向(流通中・消費者の手元にある間は行政機関が確認できるように) | 個人スマホ前提の通信障害等リスクへの具体的な対応策 |
デジタル代替が実現すると、パッケージはどう変わるか
分科会の取りまとめでは、デジタル化に期待される効果として、表示事項の増加により容器包装に表示しきれない、あるいは字が小さく見づらいという現行の課題に対し、急な仕様変更への対応のしやすさ、アレルギー情報の拡大表示、情報のソート、フォントサイズの調整、多言語対応のしやすさが挙げられています。広告表示についても一切禁止されるわけではなく、義務表示より先に出たり目立つ位置に出て視認を妨げないよう、消費者庁が「望ましい例」をガイドラインで整理する方向で検討が進んでいます。調理方法や使用上の注意、保存方法、問い合わせ先といった情報についても、義務表示が分かりにくくならなければ同一ページでの情報提供も可とされています。ただし、容器包装に必ず残す表示とデジタルに代替できる表示の具体的な線引きはまだ決まっていないため、現時点でパッケージの見た目がどこまで変わるかを断定することはできません。
食品メーカーが今のうちに整理しておくべき5つの論点
論点1 自社の表示データはデータ化されているか
分科会の取りまとめは、制度上求める水準として「既にシステム等を導入し表示内容をデータ化している事業者」を想定するのが適当としています。つまり、紙やExcelでの管理から一歩進んだデータ管理の仕組みがあるかどうかが、対応の出発点になります。まずは自社の一括表示情報がどの程度データとして一元管理されているかを棚卸しすることが、最初の一歩です。
論点2 1商品1コードの1対1対応をどう設計するか
制度では、商品と表示データの1対1対応が必須とされています。SKU単位・ロット単位でどこまでコードを分けるか、仕様変更時にコードをどう更新するかは、自社の生産・出荷体制に合わせた設計が必要です。印刷側との連携も含め、早めに運用イメージを描いておくことが望まれます。
論点3 修正履歴をどう記録・保管する体制を作るか
修正履歴の保管は、一定の要件化の方向で検討が進んでいます。当該商品が流通中または消費者の手元にある間、行政機関が確認できる状態を保つ必要があるため、誰が・いつ・何を修正したかを記録する社内体制の整備が課題になります。保管期間の数値はまだ決まっていませんが、記録を残す仕組み自体は先行して整えておく価値があります。
論点4 容器包装のレイアウトとラベル面の柔軟性をどう確保するか
容器包装に必須な表示事項とデジタル代替可能な事項の切り分けは、令和8年度以降の議論待ちです。どちらに転んでも対応できるよう、一括表示欄が縮小した場合のアレルギー表示拡大や可読性、逆に現状維持となった場合のレイアウトなど、複数パターンを想定した準備をしておくと安心です。
論点5 継続して情報を追う体制をどう作るか
検討の場は分科会から食品表示懇談会に戻り、令和8年7月15日の会合でも議題として取り上げられています。ガイドラインの具体化はこれからのため、社内で誰が制度動向をウォッチし、必要な部署に共有するかを決めておくことが、後手を踏まないための備えになります。
ウメモトにできること
食品表示のデジタル化は、決まっていないことが多い分、正解を待つよりも「今からできる備え」を整理しておくことが有効です。ウメモトでは、可変データ印刷と二次元コードを組み合わせ、1商品1コードの1対1対応を前提としたロット単位のコード発行、印字品質や読み取り精度の検証についてご相談を受けられます。LOZI・SmartBarcodeとの提携を通じて、コードと表示データの紐付け設計や、修正履歴の運用まで含めたトレーサビリティ導入支援もご相談いただけます。また、デジタル代替によって一括表示のスペースが変わる場合に備え、アレルギー表示の拡大や可読性を踏まえたラベル面のレイアウト再設計、意匠面のデザイン相談も承ります。制度の詳細が固まる前に小ロットでの先行検証を行いたい場合は、LABO/フィルム試作サービスもご活用いただけます。いずれも制度対応を保証できる段階ではないため、まずは現状の表示データやラベル運用を一緒に整理するところからご相談ください。