電池ラベル表示ガイド

電池パスポートのラベル義務は3段階——QRは最後

結論から言うと、電池のラベル表示義務はQRコードだけではありません。EU電池規則(EU)2023/1542の第13条は、分別回収マーク・カドミウムや鉛の化学記号・一般情報ラベル・QRコードという複数の表示を定めており、適用日は2025年8月から2027年2月まで段階的に分かれています。しかも一般情報ラベルとQRコードの書式を定める実施規則は、2026年8月時点でまだ採択されていません。この時間軸と表示場所のルールを、包材設計・貼付工程の視点からまとめました。

この記事の要点

  • 「電池パスポート=QRコード」ではありません。ラベル表示義務は第13条だけで複数あり、適用日もそれぞれ異なります。
  • 分別回収マークの表示は、2025年8月18日からすでに施行済みです。
  • 表示は電池本体への直接印刷・刻印が原則です。電池の性質やサイズから不可能または正当化されない場合に限り、梱包と添付文書に貼付するとされています。
  • 「見やすく、判読可能で、消えないように」という要求が条文にあり、これは印刷方式と基材の組み合わせで応えられる領域です。
  • 一般情報ラベルとQRコードの書式を定める実施規則は未採択のため、適用日そのものが後ろ倒しになる可能性を含め、最終仕様はまだ固まっていません。

「電池パスポート=QRコード」ではない

電池パスポートというと、QRコードを貼れば完了というイメージが先行しがちです。しかしEU電池規則(EU)2023/1542の第13条は、電池のラベルに表示すべき項目をいくつも定めており、QRコードはそのうちの一つにすぎません。分別回収マーク、カドミウム・鉛の化学記号、Annex VI Part Aの一般情報を記載したラベル、そしてQRコード——これらは適用日がそれぞれ異なり、2025年8月18日からすでに義務化が始まっているものと、2027年2月18日までまだ猶予があるものが混在しています。制度全体の現在地は欧州DPPの解説、データキャリアの規格そのものについてはDPPのQRコードは義務か整理した記事で扱っています。ここでは、電池パスポート(第77条、2027年2月18日義務化)に先行して求められる、電池本体のラベル表示に絞って解説します。

適用日は段階的——すでに始まっているものもある

電池のラベル表示 適用日
表示する内容 適用日 状況
分別回収マーク(車輪付きゴミ箱に×印) 2025年8月18日 施行済み
Cd・Pbの化学記号(含有量が基準を超える場合) 第13条(5)に基づく表示義務 適用日は当社では確認できていない
一般情報を記載したラベル 2026年8月18日、または実施規則の発効から18ヶ月後のいずれか遅い方 実施規則が未採択のため確定していない
QRコード 2027年2月18日 実施規則が未採択のため書式は確定していない

カドミウム0.002%超または鉛0.004%超を含む電池には、第13条(5)により化学記号の表示義務があります。分別回収マークはすでに施行済みであるため、対応が済んでいない場合は優先度の高い項目です。一方、一般情報ラベルとQRコードは、書式を定める実施規則の採択状況によって、適用日そのものが動く可能性が残っています。

電池本体が原則。難しい場合は梱包と添付文書

第13条(7)は、ラベルとQRコードを電池本体に、見やすく、判読可能で、消えないように印刷または刻印することを原則としています。電池の性質やサイズから見てそれが不可能な場合、または正当化されない場合に限り、梱包と、電池に添付する文書に貼付するとされています。梱包か添付文書のどちらかを選べるという書き方ではなく、条文では両方が並列で示されている点に注意が必要です。小型のセルや複雑な形状の電池では本体表示が現実的でないケースもあり、その場合に梱包と添付文書の設計に移ります。包材のサイズ・材質・貼付面の確保は、この原則を踏まえて検討しておく必要があります。

「消えないように」という要求

第13条(7)はさらに、表示が見やすく、判読可能で、消えないようにであることを求めています。電池は高温・振動・薬品・屋外環境など、過酷な条件で長期間使用される製品です。ラベルが数年で退色したり、擦れて読めなくなったりすれば、この要求を満たせません。条文自体は具体的な耐久年数や試験方法を細かく規定していない分、使用環境に応じた印刷方式・基材・表面加工の組み合わせを、個別に検証しておく必要があります。耐候性の考え方はUV耐性ラベルの解説粘着力の種類でも扱っています。

実施規則は未採択——ラベルの最終仕様はまだ固まっていない

一般情報ラベルとQRコードの書式を定める実施規則(第13条(10))は、2025年12月から2026年1月にかけて公開協議とWTO通知の段階に入りましたが、2026年8月時点で正式採択・官報掲載は当社では確認できていません。実施規則が採択されていないということは、一般情報ラベルの適用日が2026年8月18日のまま確定するのか、実施規則の発効から18ヶ月後という規定によって後ろ倒しになるのかも、現時点では定まっていないということです。QRコードの具体的なサイズや配置についても同様に未確定であり、確定していない数値を仕様書や図面に書き込んでしまうと、実施規則の採択後に版下や貼付工程を作り直す手戻りが発生します。数値が固まるまでは、コードの配置や余白に調整の余地を残した設計にとどめることをおすすめします。

ウメモトにご相談いただけること

実施規則の内容を先取りして解釈すること、電池パスポートの該当性・適用可否を法的に判断すること、電池パスポートの発行主体になることは、私たちの対応範囲外です。パスポートを発行する義務は電池メーカー側にあり、私たちが担うのはラベル・データキャリアの実装を支援する立場までです。自社の電池が規則の対象に当たるかどうかの判断は、JETRO(日本貿易振興機構)の「貿易投資相談」などの公的窓口にご確認いただくことをおすすめします。ご相談いただけるのは、ラベルの物理仕様・耐久設計・可変データ印刷、そして小ロットでの先行検証です。実施規則の採択を待つ間も、耐久印字方式の検証や被着体との相性確認は始められます。

よくある質問

Q1電池パスポートとラベル表示義務は同じものですか。
Aいいえ、別の条文です。電池パスポート(第77条)は2027年2月18日から電池ごとの詳細データへのアクセスを求める義務で、ラベル表示義務(第13条)は本体・梱包に印刷する項目の話です。ラベル表示義務だけで複数の項目があり、適用日もそれぞれ異なります。
Q2分別回収マークはもう表示しなければなりませんか。
Aはい。第13条(4)に基づき、2025年8月18日からすでに義務化されています。まだ対応していない場合は、優先度の高い項目として確認をおすすめします。
Q3QRコードの表示はいつから必要ですか。
A第13条(6)により2027年2月18日からの予定です。ただし書式を定める実施規則が2026年8月時点で未採択のため、具体的な仕様はまだ確定していません。
Q4「消えないように」とは、具体的にどの程度の耐久性を指しますか。
A条文は視認性・判読性・耐久性を求めていますが、試験方法や年数までは規定していません。温度・薬品・屋外暴露といった使用環境に応じて、印刷方式や基材を個別に検証する必要があります。
Q5自社の電池がこの規則の対象になるか判断してもらえますか。
A私たちでは法的な該当性の判断はできません。JETRO(日本貿易振興機構)の「貿易投資相談」などの公的窓口にご確認いただくことをおすすめします。ご相談いただけるのは、対象と確定した後のラベル仕様・耐久設計についてです。

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